薬局業界について

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薬局業界の最新動向

経営者の高齢化、業界先行き不安、薬剤師不足、大手調剤のM&A攻勢などを背景に、調剤薬局のM&Aは飛躍的に増加しています。
本項では、薬局業界の最新データを基に、様々な角度から調剤薬局の業界環境を考察しました。大きな業界転換期を迎え、M&Aが益々重要な役割を担う時代になってきたことがわかります。

再編

大手企業の占有率が低く、今後もM&Aが活発に行われることが予想されるが、相場は右肩下がり。

全国の調剤薬局数は、約59,000店(コンビニエンスストアは全国で約56,000店)となっており、小規模店舗が乱立している状態です。大手調剤チェーンのシェアは、トップ企業でもわずか3.3%、上位10社でも18.8%(調剤薬局専業チェーン上位10社で16.5%)、全体の約7割が個人薬局で構成され、マーケット・リーダーと呼べる企業のいない低寡占市場です。但し、2016年度においては、非公表ベースの水面下で年間1,000店舗ペースでのM&Aが行われており(厚生局より当社調べ)、今後ますます寡占化が進むと予想されます。
一方、利益構造に関しましては、政府の医療費削減の方針は続くと見られ、薬価引き下げや調剤報酬の下落により、調剤薬局の利益は縮小が予想されます。規模の経済が働きやすい市場でもあるため、大手調剤チェーンのスケールメリットを求めた合併・買収は、今後も加速する見通しです。しかし、2016年、2018年の報酬改定にて、一ヵ月に40,000枚、更には400,000枚以上を応需する調剤チェーンの技術料は大きく引き下げられ、収益に大きな影響を与えました。また、2019年10月の消費増税に加え、2021年からは毎年の薬価改正がスタートする予定となり、技術料のみならず薬価差益もますます減少していく見通しです。そのような環境の中、薬局M&Aの相場もより一層の下落が予想されます。
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調剤売上高ランキング

  • 調剤薬局
  • ドラッグストア
2017年度 2018年度
順位 会社名 調剤売上(百万円) 調剤売上(百万円) 対前年度比 占有率 調剤店舗数
1 アインHD 238,645 245,003 2.7% 3.3% 1,132
2 日本調剤 205,192 208,622 1.7% 2.8% 596
3 クラフト 185,720 191,610 3.2% 2.6% 904
4 クオールHD 135,108 134,122 -0.7% 1.8% 740
5 ウエルシアHD 114,824 129,811 13.1% 1.7% 1,287
6 総合メディカルHD 109,918 106,282 -3.3% 1.4% 698
7 阪神調剤HD 89,880 103,050 14.7% 1.4% 533
8 スズケン 99,550 94,657 -4.9% 1.3% 615
9 東邦HD 98,019 93,222 -4.9% 1.3% 539
10 スギHD 84,100 91,073 8.3% 1.2% 833
11 メディカルシステムネットワーク 87,172 90,706 4.1% 1.2% 420
12 ツルハHD 66,980 76,700 14.5% 1.0% 566
13 アイセイ薬局 61,170 60,700 -0.8% 0.8% 362
14 ココカラファイン 54,738 58,710 7.3% 0.8% 292
15 マツモトキヨシHD 44,343 45,710 3.1% 0.6% 289
16 トーカイ 43,042 41,817 -2.8% 0.6% 127
17 ファーマライズHD 43,202 40,613 -6.0% 0.5% 258
18 フロンティア 34,670 34,940 0.8% 0.5% 148
19 薬樹 31,900 32,000 0.3% 0.4% 147
20 メディカル一光Gr 22,484 22,452 -0.1% 0.3% 95
その他 5,815,743 5,526,100 -5.0% 74.4% 49,032
合計 7,666,400 7,427,900 -3.1% 100.0% 59,613

※2018年度における各社有価証券報告書、ドラッグマガジン等より抜粋。一部当社推計。
※詳細の把握が難しい企業については除外。

ドラッグストアの売上高ランキング

2017年度 2018年度
順位 会社名 売上(百万円) 売上(百万円) 対前年度比 占有率 店舗数
1 ツルハHD 667,784 782,447 17.2% 10.8% 2,082
2 ウエルシアHD 695,268 779,148 12.1% 10.7% 1,878
3 コスモス薬品 557,999 611,137 9.5% 8.4% 993
4 サンドラッグ 564,215 588,069 4.2% 8.1% 1,147
5 マツモトキヨシHD 538,370 554,556 3.0% 7.6% 1,654
6 スギHD 457,047 488,464 6.9% 6.7% 1,190
7 ココカラファイン 388,482 397,403 2.3% 5.5% 1,354
8 富士薬品 341,577 350,640 2.7% 4.8% 1,337
9 クリエイトSDHD 266,233 284,270 6.8% 3.9% 595
10 カワチ薬品 268,205 264,926 -1.2% 3.6% 334
11 クスリのアオキHD 221,286 250,885 13.4% 3.4% 541
12 ナチュラルHD 200,430 212,730 6.1% 2.9% 435
13 中部薬品 117,949 127,781 8.3% 1.8% 379
14 キリン堂HD 124,564 127,578 2.4% 1.8% 369
15 ダイコク 102,000 115,000 12.7% 1.6% 174
16 Genky DrugStores 94,869 103,897 9.5% 1.4% 252
17 薬王堂 83,100 91,810 10.5% 1.3% 265
18 サツドラHD 78,482 84,649 7.9% 1.2% 218
19 トモズ 71,050 75,490 6.2% 1.0% 175
20 セキ薬品 68,100 72,740 6.8% 1.0% 179
その他 1,611,174 1,693,227 5.1% 23.3% 6,759
合計 6,850,400 7,274,400 6.2% 100.0% 20,228

※2018年度における各社有価証券報告書、ドラッグマガジン等より抜粋。一部当社推計。
※詳細の把握が難しい企業については除外。
※マツモトキヨシHDとココカラファインは経営統合に向け協議中で、実現されれば業界トップへ。

市場規模推移

成熟

医薬分業伸び率の成長ペースが鈍化

2000年代に入り、医薬分業伸び率の鈍化が鮮明になってきました。2016年度分業率の全国平均は、過去最高の71.7%に達しました。1990年代と比較すると2000年代は伸び率が緩やかになってきているのが分かります。また、各都道府県によってバラつきはあるものの、分業率の上限と見られていた70%を全国平均で上回り、今後急激な成長は期待できません。分業率伸び率の鈍化とともに処方箋枚数の伸びも鈍化してきており、過去の様に、薬価改正・消費増税等による収益の減少の穴埋めを、処方箋枚数の増加に期待することは難しい環境です。

分業率の成長鈍化は、すなわち新規出店機会の減少を意味します。大手調剤の新規出店ペースは、2013年をピークに減少傾向にあり、反対にM&A件数は年々増加を続けてきました。成長力を維持するために、M&Aによる規模拡大が必須となった大手チェーンの買収攻勢の結果、過熱的なバブル相場が形成されました。更に、大手のみならず、中小企業・異業種も薬局M&Aに積極的な姿勢を示しており、今後もM&Aは増加を続けると思われます。

逆風

過去診療報酬改定の推移

調剤報酬の改定実態
  薬価等改定率(%) 診療報酬改定率
(医科+歯科+調剤)(%)
診療報酬全体改定率(%) 調剤のみ改定率(%) 調剤実質改定率
(薬価等+調剤)(%)
1996年 -2.6 3.4 0.8 1.3 -1.3
1997年 -1.32 1.7 0.38 -1.32
1998年 -2.8 1.5 -1.3 0.7 -2.1
2000年 -1.7 1.9 0.2 0.8 -0.9
2002年 -1.4 -1.3 -2.7 -1.3 -2.7
2004年 -1 0 -1 0 -1
2006年 -1.8 -1.36 -3.16 -0.6 -2.4
2008年 -1.2 0.38 -0.82 0.17 -1.03
2010年 -1.36 1.55 0.19 0.52 -0.84
2012年 -1.38 1.38 0.004 0.46 -0.92
2014年 -0.63 0.73 0.1 0.22 -0.41
2016年 -1.33 0.49 -0.84 0.17 -1.16
2018年 -1.74 0.55 -1.19 0.19 -1.55
2019年 -2.4 -2.4
2020年 -1.01 0.55 -0.46 0.16 -0.85

厚生労働省の統計データを参考にし、当社作成。

2025年には、国内総人口の約3割が65歳以上になると推測され、保険制度の維持には、医療費抑制が急務ですが、国民医療費は増加の一途を進んでいます。

厚生労働省は、医療費抑制策として、ここ10年間で倍増した薬剤料の削減を掲げてきました。薬剤料増加の原因を、医療機関による薬価差益獲得を目的とした医薬品の過剰利用にあるとして、薬価の引き下げが行われています。さらに政府は、後発医薬品調剤体制加算の導入などでジェネリック医薬品の使用を促進してきましたが、今後、ある程度までシェアが高まれば、将来的に後発医薬品調剤体制加算は廃止される可能性が高いと想定されます。今後は、在宅医療推進への方向転換が明確となり、2016年以降の報酬制度では、一本化された基準調剤加算の算定要件に、在宅の実績が必須となりました。これまで以上に、調剤薬局の経営は厳しい環境に変化していくことは間違いありません。

薬価政策の今後の行方を占う調剤医療費の推移

2015年に国民総医療費は42兆円に到達しました。その約18%に当たる7.5兆円を薬局調剤医療費が占めており、年間数千億円単位の増加が進んでいますが、その主因は、10年間で2倍以上に増加した薬剤料です。特に近年ではC型肝炎薬やがん免疫療法薬など高額な薬剤も市場に出回り、薬剤料の増加がより顕著になりました。上図からも分かる様に、調剤報酬額に占める薬剤料の比率は年々増加傾向です。
厚生労働省は、この薬剤料増加に歯止めをかけるための抜本改革として、2021年から薬価改定を毎年実施する方針を固めました。2019年には消費増税も施行されるため、今後調剤薬局における薬価差益は急激に減少するものと思われます。
また、薬価引き下げと並行し、下記の様なジェネリック医薬品の促進も継続的に行われています。

後発医薬品体制加算の今後

2018年報酬改定に伴い、後発品調剤体制加算の算定条件がさらに厳しい数値となりました。
後発医薬品調剤体制加算1 (数量ベース75%以上) 18点
後発医薬品調剤体制加算2 (数量ベース80%以上) 22点
後発医薬品調剤体制加算3 (数量ベース85%以上) 26点

診療報酬改定に伴い、医科での一般名処方加算1が3点→6点に引き上げられたことで、後発品の調剤機会は拡大が予想されます。しかし、それでも多くの薬局では新基準は非常に高いハードルであり、後発加算不算定による収益減少を余儀なくされる環境になりました。

また、ハードルの高い後発品調剤体制加算の算定を諦め、薬価差益の「割引率」ではなく「絶対額」を大きく取れる先発品へシフトする逆流現象の防止の為、後発医薬品比率が20%以下の薬局には減算となる仕組みも導入されました。現状は、問題のない水準ですが、将来的な後発医薬品調剤体制加算の廃止に伴い、減算対象となる水準も上昇する可能性が高いと予想されます。

後発医薬品の数量シェアは、上図の様に着々と上昇していますが、金額シェアはわずか30%強程度でしかありません。後発品を処方されている患者でも、新薬が発売されるとそちらへシフトする傾向が高いという調査結果もあり、後発品促進による医療費削減効果に懐疑的な見方も出始めています。
下記政府目標達成後は、後発加算のはしごが外される可能性も大いにあります。

◆ジェネリック医薬品の数量シェア目標値
①2017年(平成29年)央に70%以上(2018年目標達成)
②2018年(平成30年)から2020年(平成32年)末までのなるべく早期に80%以上

※2013.4以降、後発品比率の算出方法が変更。グラフは新指標による数値を記載。

減益

2019年消費増税の救済措置は?2021年より毎年薬価改正がスタート。

薬価改定の推移
改定 改定率 特記事項
年度 薬剤費ベース(%) 医療費ベース(%)
1988年 -10.2 -2.90  
1989年 +2.40 +0.65 消費税導入(3%)により救済措置
1990年 -9.20 -2.70  
1992年 -8.10 -2.40 加重平均方式の導入
1994年 -6.60 -2.00  
1996年 -6.80 -2.60  
1997年 -4.40 -1.27  
+1.40 +0.40 消費税増税(3%→5%)により救済措置
1998年 -9.70 -2.70  
2000年 -7.00 -1.60  
2002年 -6.30 -1.30  
2004年 -4.20 -0.90  
2006年 -6.70 -1.60  
2008年 -5.20 -1.10  
2010年 -5.75 -1.23  
2012年 -6.00 -1.26  
2014年 -2.65 -0.58 消費増税(5%→8%)による救済措置無し
2016年 -5.57 -1.22 調剤報酬はプラス改定も、薬価は大幅なマイナス改定
2018年 -7.48 -1.65  
2019年 -2.40 -0.51 ※2019年10月 追加消費増税(8%→10%)
2020年  
2021年 ※毎年薬価改正開始
2022年  
2023年  

過去の消費税導入や増税のタイミングでは、救済措置として薬価のプラス改定が行われました。しかし、2014年4月の薬価改定では、消費増税のタイミングであったにも関わらず0.58%のマイナス改定となりました。

2019年10月に消費税は10%へ増税されますが、医療費削減が掲げられる今、プラスの改定となる可能性は低く、また、もしプラス改定がなされたとしても、その後大きなマイナス改定となる例が多い事が、過去の統計からわかります。

更に、2021年から毎年薬価改正を行う方針が打ち出され、薬価は加速度的に下落する環境となりそうです。薬局の収益環境は、大きく悪化する事が予想されるため、将来を見越した運営、選択肢が求められることになります。

異業種からの市場参入で競争はますます激化

1997年に日本薬剤師会は薬局の必要数を24,000軒としましたが、現在の薬局数は約59,000軒と大幅に目標数を上回っている状況です。現在、ドラッグストアや医薬品卸が大手の一角として名乗りを上げていますが、近年の動向として大手調剤チェーンと異業種企業が提携する例が増えており、コンビニや家電量販店の調剤薬局併設型に加え、電鉄と提携した駅ナカや駅チカへの展開も見られるようになってきました。大手調剤チェーンのみならず、異業種の積極的な市場参加により、再編の動きはさらに活発化する事は間違いありません。

また、大手ドラッグストアチェーンの調剤シフトが本格化しており、5年前と比較すると、上位16社だけでも約2,000億円以上の調剤売上が急増しています。カードのポイント効果や利便性、顧客の購買動向の変化などによって、現存の調剤薬局から処方箋を吸い上げられている事実は否めません。さらに今後、リフィル化の検討次第では、明暗が明確になってくることが予想されます。